見逃さないで! “狭隅角”が引き起こす急性緑内障発作

今回は『急性緑内障発作』について説明したいと思います。
あまり聞きなれない疾患かもしれませんが、実はこの急性緑内障発作を起こしやすい目の状態をされている方は、意外と多くいらっしゃいます。それが『狭隅角眼(きょうぐうかくがん)』です。


【狭隅角眼(きょうぐうかくがん)とは】

眼の中にある“隅角”という部分が“狭く”なっている状態を指します。
この隅角は、遠視傾向のある年配の女性に比較的多く見られます。
“隅角”とは、角膜(黒目)と虹彩(茶目)で挟まれた部分のことで、ここには眼内の水(房水)の排出口である「繊維柱帯」があります。房水はこの経路を通って排出され、目の中の栄養補給や眼圧の調整に関わる重要な役割を担っています。この房水の作られる量と排出される量が正常にコントロールできていれば、眼圧を正常に保つことができます。
(正常な眼圧は10〜21mmHgです)


【隅角が狭いとどうなるの?】

加齢とともに隅角はさらに狭くなりやすくなります。
隅角が狭くなると、房水が十分に流れ出なくなり、眼内の限られた空間に水がたまり、眼圧が急激に上昇します。
これが『急性緑内障発作』と呼ばれる状態です。


この発作が起こると、眼圧が50mmHg以上に達することもあり、

・頭痛

・眼痛

・吐き気

・視力低下

といった症状が現れます。
眼圧の高い状態が続くと、視神経にダメージが及び、短時間で重度の視野障害を引き起こし、放置すると失明に至る可能性もあります。
そのため、緊急の治療が必要です。

※名前が似ていますが、慢性的に進行する「緑内障」とは別の疾患です。


【狭隅角眼の診断】

診察室で行う顕微鏡下で、ある程度の狭隅角眼を診断することはできますが、正面からは見づらい部分もあります。
当院には、前眼部OCT(CASIA2 Advance)という機器を導入しており、隅角の広さを計測することができます。




隅角における開大度や角度、前房深度を詳細に測定することが可能ですが、患者さまにとっては診察室でこれらの用語を聞いても難しいですよね。
その際はこのような撮影画像を用いて説明することで、隅角の広い正常眼との違いを視覚的にご確認いただけます。


また、緑内障の中でも隅角が閉塞または狭いタイプを「閉塞隅角緑内障」と呼びます。
この検査により、狭隅角や閉塞隅角緑内障の診断を明確に行うことができ、『急性緑内障発作』が起こる可能性のある眼を予測することができます。
しかし、なかなか眼科受診をしないと、自身が狭隅角眼ということを知り得ず、知らず知らずのうちに日常生活でリスクの高い行動(以下で説明)をとってしまい、発作を引き起こす可能性があります。


【注意が必要な方へ:狭隅角眼のリスクと対策】

狭隅角眼の方が日常生活で注意すべき点:

①暗所での作業や読書、うつむき姿勢は控える

 例:暗い部屋でうつ伏せ状態でのマッサージ

 →暗い環境では瞳孔が拡大し、隅角がさらに狭くなります。また、うつむく姿勢では水晶体が前方に移動し、眼圧が上がる危険性があります。

②胃カメラ検査や全身麻酔前に医師へ申告
 →抗コリン薬が使用されることがあり、これが発作の引き金になることがあります。胃カメラの検査や全身麻酔を受ける前は、「隅角が狭いので、抗コリン薬を使うと緑内障発作を起こす可能性がある」と担当医に伝える。

※当院で狭隅角と診断された方には、お薬手帳にスタンプを押していますので、必要に応じて医師へご提示ください。

③風邪薬や精神科の薬の注意書きを確認
 →風邪薬や精神科などの薬で「緑内障の方は服用注意」と記載がある場合は、内服を控える。


【治療について】

狭隅角であっても、すべての方が発作を起こすわけではありませんが、発症すると緊急での治療が必要であったり、視力の予後が悪くなる可能性があるため、適切な治療を受けておくことで安心して日常生活を過ごすことができます。

主な治療法:

①レーザー虹彩切開術
 →レーザー虹彩切開術とは、虹彩の周辺部にレーザーを用いて穴をあけ、房水の流路を確保する方法です。急性緑内障発作を予防できます。

 虹彩光凝固術(片眼)6,620点
 手技料のみ(片眼)
 ・1割負担 6,620円
 ・2割負担 13,240円
 ・3割負担 19,860円

②白内障手術
 →①の治療だけでは完全には急性緑内障発作を予防できるわけではないため、白内障手術が必要となる場合があります。白内障手術では、分厚い水晶体を取り除き、薄い眼内レンズを挿入します。眼内レンズは水晶体に比べると非常に厚みが薄いため、虹彩の前後の空間が広がることとなり、隅角が広がります。


【まとめ】

狭隅角眼は急性緑内障発作を起こさなければ無症状のため、症状が出るまで気づきにくく、健康診断などでは発見されにくいのが現実です。しかし、急性緑内障発作は緊急性の高い病気であり、早期発見・治療が非常に重要です。

40歳を過ぎたら、一度は眼科での検診を受けることをおすすめします。
見逃さないで! “狭隅角”が引き起こす急性緑内障発作

今回は『急性緑内障発作』について説明したいと思います。
あまり聞きなれない疾患かもしれませんが、実はこの急性緑内障発作を起こしやすい目の状態をされている方は、意外と多くいらっしゃいます。それが『狭隅角眼(きょうぐうかくがん)』です。


【狭隅角眼(きょうぐうかくがん)とは】

眼の中にある“隅角”という部分が“狭く”なっている状態を指します。
この隅角は、遠視傾向のある年配の女性に比較的多く見られます。
“隅角”とは、角膜(黒目)と虹彩(茶目)で挟まれた部分のことで、ここには眼内の水(房水)の排出口である「繊維柱帯」があります。房水はこの経路を通って排出され、目の中の栄養補給や眼圧の調整に関わる重要な役割を担っています。この房水の作られる量と排出される量が正常にコントロールできていれば、眼圧を正常に保つことができます。
(正常な眼圧は10〜21mmHgです)


【隅角が狭いとどうなるの?】

加齢とともに隅角はさらに狭くなりやすくなります。
隅角が狭くなると、房水が十分に流れ出なくなり、眼内の限られた空間に水がたまり、眼圧が急激に上昇します。
これが『急性緑内障発作』と呼ばれる状態です。


この発作が起こると、眼圧が50mmHg以上に達することもあり、

・頭痛

・眼痛

・吐き気

・視力低下

といった症状が現れます。
眼圧の高い状態が続くと、視神経にダメージが及び、短時間で重度の視野障害を引き起こし、放置すると失明に至る可能性もあります。
そのため、緊急の治療が必要です。

※名前が似ていますが、慢性的に進行する「緑内障」とは別の疾患です。


【狭隅角眼の診断】

診察室で行う顕微鏡下で、ある程度の狭隅角眼を診断することはできますが、正面からは見づらい部分もあります。
当院には、前眼部OCT(CASIA2 Advance)という機器を導入しており、隅角の広さを計測することができます。




隅角における開大度や角度、前房深度を詳細に測定することが可能ですが、患者さまにとっては診察室でこれらの用語を聞いても難しいですよね。
その際はこのような撮影画像を用いて説明することで、隅角の広い正常眼との違いを視覚的にご確認いただけます。


また、緑内障の中でも隅角が閉塞または狭いタイプを「閉塞隅角緑内障」と呼びます。
この検査により、狭隅角や閉塞隅角緑内障の診断を明確に行うことができ、『急性緑内障発作』が起こる可能性のある眼を予測することができます。
しかし、なかなか眼科受診をしないと、自身が狭隅角眼ということを知り得ず、知らず知らずのうちに日常生活でリスクの高い行動(以下で説明)をとってしまい、発作を引き起こす可能性があります。


【注意が必要な方へ:狭隅角眼のリスクと対策】

狭隅角眼の方が日常生活で注意すべき点:

①暗所での作業や読書、うつむき姿勢は控える

 例:暗い部屋でうつ伏せ状態でのマッサージ

 →暗い環境では瞳孔が拡大し、隅角がさらに狭くなります。また、うつむく姿勢では水晶体が前方に移動し、眼圧が上がる危険性があります。

②胃カメラ検査や全身麻酔前に医師へ申告
 →抗コリン薬が使用されることがあり、これが発作の引き金になることがあります。胃カメラの検査や全身麻酔を受ける前は、「隅角が狭いので、抗コリン薬を使うと緑内障発作を起こす可能性がある」と担当医に伝える。

※当院で狭隅角と診断された方には、お薬手帳にスタンプを押していますので、必要に応じて医師へご提示ください。

③風邪薬や精神科の薬の注意書きを確認
 →風邪薬や精神科などの薬で「緑内障の方は服用注意」と記載がある場合は、内服を控える。


【治療について】

狭隅角であっても、すべての方が発作を起こすわけではありませんが、発症すると緊急での治療が必要であったり、視力の予後が悪くなる可能性があるため、適切な治療を受けておくことで安心して日常生活を過ごすことができます。

主な治療法:

①レーザー虹彩切開術
 →レーザー虹彩切開術とは、虹彩の周辺部にレーザーを用いて穴をあけ、房水の流路を確保する方法です。急性緑内障発作を予防できます。

 虹彩光凝固術(片眼)6,620点
 手技料のみ(片眼)
 ・1割負担 6,620円
 ・2割負担 13,240円
 ・3割負担 19,860円

②白内障手術
 →①の治療だけでは完全には急性緑内障発作を予防できるわけではないため、白内障手術が必要となる場合があります。白内障手術では、分厚い水晶体を取り除き、薄い眼内レンズを挿入します。眼内レンズは水晶体に比べると非常に厚みが薄いため、虹彩の前後の空間が広がることとなり、隅角が広がります。


【まとめ】

狭隅角眼は急性緑内障発作を起こさなければ無症状のため、症状が出るまで気づきにくく、健康診断などでは発見されにくいのが現実です。しかし、急性緑内障発作は緊急性の高い病気であり、早期発見・治療が非常に重要です。

40歳を過ぎたら、一度は眼科での検診を受けることをおすすめします。